米軍のウェアにおける最高傑作との呼び声も高いのが、いわゆる「ジャングル・ファティーグ」と呼ばれる、薄手のリップストップを用いた熱帯地域用のカーゴパンツ。ベトナム戦争時に使用されたものですな。
僕がこれを買ったのはもう15年以上前です。
SMALL。と言っても太いので、今でもギリギリ穿けます。これを穿ける体形を維持していきたい。
正式名称は「TOURSERS, MAN'S, COTTON WIND RESISTANT RIP-STOP POPLIN, OG 107-CLASS 1」。69年会計。コンストラクターは BROWNWOOD MFG社。
ジッパーはSCOVILL。これを見てるだけでニヤニヤできます。
“最高傑作”とまで呼ばれる評価と人気ですから今では立派なヴィンテージで、タマ数も減ってきており、値段もそこそこ高くなってきています。
僕が買ったときはまだまだタマ数も多く、たかだか15年前にもかかわらずデッドストックでも1万円以下で買えていました。M65のジャケット&パンツも同様で、当時はまだ「定番のレギュラー古着」くらいの感覚だったんです。
これを買った日のことはハッキリと覚えています。お店は渋谷PARCOに入っていた「グラストンベリー」というヨーロッパ系のアイテムを扱うセレクトショップでした。
デッドストックだったのですが、洗いをかけて中古加工された状態で売られていました(今ではもったいなくて絶対に考えられないですけど)。
せっかくのデッドストックに手を加えられているのはそのときも気になったのですが、それでも7,800円かそこらのあまり気にせず買える値段だったので、「まあいいか」くらいの気持ちで購入しました。
まだ若くて体力もある時代。僕は渋谷で買い物をしたあとに、靴屋でもチェックしようと、上野までハシゴをしたのです。
未使用品で水の通っていないバキバキの状態のジャングル・ファティーグが、5,600円くらいで売られていたのです(今となってはもはや仕入れ値!)。
洗いがかけられて色も薄くなったものをそれより高い値段で買ったばかりの僕は、中田で売られていたバキバキ未使用のジャングル・ファティーグを見て頭をかかえて泣きそうになりました。
今ならば、もう一本買ったことでしょう。でも当時は20代前半でお金もなく、ズボンを一度に2本も買えるような予算は、残念ながら持ち合わせていませんでした。
しかも今ほどのコレクション気質でもなかったので、同じものをもう一本買うなんて考えられませんでした。
そうこうしているうちに、あれよあれよと枯渇化が進行。そうそう簡単に手に入るアイテムではなくなってしまいました。
そんな口惜しい思い出がありつつも、やはり名品。ドカンと太いシルエットとドライでシャリ感のあるリップストップ生地はなんとも穿き心地がよく、サイズアウトしてしまうまでは本当によく穿いていました。
このようにパッカリングとアタリが出やすい。色も落ちてライトなオリーヴ色になってきて、それがまたカッコイイ。
でも、もしもあのとき中田商店で買っていたら、完全に新品の状態からこの経年変化を楽しめたんだよな……。そんな後悔を常に抱いていました。
ところがそんなオリジナル至上主義者を鼻で笑うように、雑誌『POPEYE』で「普段に穿くにはレプリカで十分」みたいな紹介文と共に取り上げられたのが、その中田商店オリジナルブランド “SESSLER MFG” のジャングル・ファティーグでした。
POPEYEではX-LARGEサイズをギューっと絞って穿くスタイルが提案されていて、それはそれはかっこよかった。
オリジナルにこだわっていた自分が急にバカらしく感じられました。
普段は海外ブランドのアイテムに限定して愛用している僕ですが、この中田商店オリジナルに関しては例外で、チノパンも愛用していて身近な存在です。
POPEYEを読んで気になり出してから数年経って急に欲しくなり、上野へ。
ちょうどサイズも豊富にあるタイミングで購入することができました。
いやはや素晴らしいクオリティ。生地のハリとコシ、リップストップのシャリ感、いずれもオリジナルに引けを取らない仕上がりです。
SESSLERはロットによって縫製がやたらと雑なときがあるのですが、今回売られているものはなかなか綺麗に出来上がっています。
糸の始末はご愛嬌。
しかも驚いたのが……
むむむ……?
わーーーーーーーーーーー!
ファスナーが TALON だ!!!!!!!
こういうところですよ。さすが中田商店、わかっていらっしゃる!
YKKが圧倒的なシェアを誇る現在、現行品でTALONを使うってなかなかないですよ!!
これは超うれしい。
4,800円(税抜)でこれだけのクオリティ。こうなると、“あえて” と言うより”むしろSESSLERこそがベスト” なのではないかとすら思えてきます。
値段も値段なので汚れやダメージも気にせず穿けますし、いつかまた買い直せばいいやという気軽さもありますしね。
根はオリジナル&インポート至上主義者の僕です。本物が買えるのであれば本物が良いというのは変わりありません。ところが15年前はレギュラー中のレギュラーだったオリジナルのジャングル・ファティーグも、M51もM65も、今では気軽に買えるものではなくなりつつあります。かつて安く買えたものに倍以上の金額を払うのは、なんとも悔しい。
その代わり、米軍のアイテムにおいては、本物ではありませんが実際の納入メーカーによる民生品を気軽に買えるというメリットもあります。代表的なのは以下の2つのメーカーでしょうかね。
最近は著名セレクトショップでも取り扱いが増えている「PROPPER」。
日本のセレクトショップでは、PROPPERがいま最もメジャーで人気の軍パンブランドかもしれません。
お値段は、中田商店と次に挙げるブランドよりはちょいとお高めですが。
では、さらに安さ重視でいくならば……好きな人はみんなご存じ、やっぱり「ROTHCO」でしょ。
関係ないけどアクリルニット帽。MADE IN USAで激安。
ジャングル・ファティーグのようなリップストップもある。
ぼくは短パンを持っていますが、ツイル生地のものは正直いかにもなポリ混素材で、かなりチープです。毛玉というか毛羽立ちも起きやすかったりします。
でも値段を考えれば及第点ですし、「アメカジってそういうもんだよな」という感じもあります。チープで粗雑だからこそのアメカジじゃありませんか。
年も取ったし時代も変わったし、執着できるところはこだわりつつも、時代に合わせて楽しみ方を変えてもいいのかもなと思ったりしています。