とってもおしゃれブログ

へそまがりな洋服好きの中年が全然おしゃれじゃない偏屈アイテムについて個人的な思い入れを語るブログです。

osyare is in your mind(書評『結局、男の服は普通がいい』)

僕の友人であるファッション・アナリスト:山田耕史さんが、2020年3月、初の著書『結局、男の服は普通がいい 世界一かんたん、一生使えるオシャレの方程式』を上梓されました。

 

f:id:saito_d:20200420004521j:plain

 

僕も事前に予約して購入しました。

 

 

 

友人だから紹介する……というのも正直あるっちゃあるのですが、友人になったキッカケは、あくまでその逆でした。

以前から彼の書いているファッション・ブログには痛く共感するところがあり、日々、欠かさずチェックしていたのです。

 

www.yamadakoji.com

 

twitter.com

 

その記事に言及する形でTwitterで何度かやりとりをして相互フォローしあうようになり、さらにひょんなことから「FACY」というwebメディアで2度にわたってファッションに関する対談をすることに。

 


 

 

 

その後は私的にも交流を深め、大人の親友ともいえる間柄となっていますが、元々は僕のほうが一読者であり、ただのファンだったのです。

 

山田さんに共感したポイントは主に、ファッション初心者に対し、一貫して「白シャツ・チノパン・キャンバススニーカーという普通なアイテムを着用するだけでいい」というシンプル極まりないメソッドを訴え続けていたこと。そして、ブランド品を使わずとも大衆的なアイテムでも十分おしゃれになれるとして、ユニクログンゼのレギンスパンツなど、従来のファッション系ブログとは違った独自の審美眼によるアイテムの提案をしていたことでした。

 

今でこそ「ユニクロでオシャレになれる」とファッション指南をするブロガーやYouTuberは掃いて捨てるほどいますが、僕が覚えている限り、山田さんはかなり早い段階でそれを提案していたのではないかと思っています。

また当時は “(狭義での)ノームコア” が流行する前であったにもかかわらず、装飾性を抑えたベーシック・アイテムを着ることがおしゃれへの最短コースであると提示したのは、ファッション系ブロガーの中では間違いなく一番早かったと記憶しています。

 

そして今回の書籍『結局、男の服は普通がいい』は、まさにその集大成ともいえる内容となっています。

 

洋服の初心者がまず最初に着用すべき基本的なアイテムは「白シャツ・チノパン・オーソドックスなスニーカー」だけで十分であるとして、その理由や背景についてしっかりと説明がされています。

 

また、そこから派生して、「おしゃれとは何か?」についての考察を展開。結局おしゃれとは、着ている人の本人像(=あなた自身)をどれだけ表現しているか、そしてそれについてどれだけ説得力を持たせるかであり、誰にでも当てはまる決まり切った着こなしやテクニックによるものではないという結論に達しています。

 

しかし初心者がその域に達するには時間と経験が必要となります。その近道として山田さんが提案するのは “洋服のジャンル分け” です。

 

先述した座談会の記事に登場している僕がモード服を着たとしても、決しておしゃれには見えないでしょう。なぜなら僕には、そのモード系を着るようなバックボーンが備わっていないから。

それは僕以外の誰にでも同じことが言えます。もしも逆に、ヴィジュアル系を好んで聴いてきたようなガリガリの人がアメカジを薦められて着たとしても、コスプレ以外の何物にもならないのではないでしょうか。

 

そこで山田さんは、ファッションにもいろいろな系統があるとして、スタイルを細分化し、分析と解説をしています。自分が最も近しいと思うライフスタイルや趣味、文化的背景を元にしてその服装を選び取ることで、“自分らしさ”、すなわち、見た目だけではない内実を伴ったおしゃれを目指そうというメソッドを展開しています。

 

そしてそれら様々なジャンルを横断し、汎用的に使えるアイテムこそが、山田さんの言うところの「普通服」、要するに白シャツ・チノパン・オーセンティックなスニーカー等のベーシックアイテムですよ、という論法になっているのです。

 

僕はまさに目から鱗だと感心した次第です。

 

いま世に蔓延っているおしゃれ指南と言えば、シルエットがどうだの袖を捲るだの裾丈をどうするだの色をどうするだのという、実際に着る人のキャラクターを完全に無視した小手先のテクニックばかり。

しかも提案されるスタイルは指南者の趣味に偏りがちなので、好みと客観性がバランスよく伴っているものは皆無だと言わざるを得ません。

要するに、“指南する側のキャラクター” と “教えを受ける側のキャラクター” がかけ離れている場合、それを再現するのは至難の業なのです。

 

本当に「誰にでも似合う服」を、歴史的背景や統計的なデータを元にして提示しているファッション指南本は、この『結局、男の服は普通がいい』だけだと言っても良いかもしれません。

※客観性を補完するものとして、自身の経験だけではなく、アンケート結果などの数値的な統計データがもう少しあればさらに説得力が増すのではないかと思っています。Twitterでアンケート取ってみたりしたらどうですかね?

 

上記FACYでの座談会を中心となって進めていただいた、横浜・仲町台の洋品店Euphonica」の店主・井本さんも含め、我々の普段のやりとりがこの本のインスパイアにもなったようで、そこは手前味噌ながら貢献できたかな?とも思っておりますが、これは別に僕たちのおかげと恩を着せる訳ではなく、同年代としてキャリアを築き、同じような時代を経験してきた洋服好きは必ず行きつくひとつの方向性でもあると思っています。もしも座談会が無かったとしても、山田さんはいずれこの本に書かれている結果に辿り着いたことでしょう。

 

ファッションのベテランに向けてなら、「おしゃれとは洋服のことではない。あなた自身だ」と訴える人はいます。僕もそうです。

しかし、ファッションの初心者に向けて、その辿りつくべき最終回答をしっかり提示し、そこに至るまでの道筋を簡単に説明してくれる指南コンテンツは、現時点では「山田耕史のファッションブログ」と、この書籍『結局、男の服は普通がいい』だけだと思っています。

僕も、自信を持ってオススメいたします。

 

 

さて、一方で当ブログでございますが、指南は一切しません。僕だけの趣味です。読者に真似をしてほしくもありません。客観性は完全に無視して、逆に主観でしか書かないように気を付けています。

 

言ってることが違うじゃないかって? いえ、それは違います。

それが「自分らしさ」です。僕も趣味としての洋服のキャリアはそこそこ長いもので、他人から見た目についてどう思われようと、どうでも良くなってしまったんですよ。強がりじゃなく本気で。

でもそれくらいキャリアが出来てくると、いざ見た目を気にすべきときには、ちゃんと見た目のいい格好もできるようになってくるものです。ま、つまらないから滅多にしないけどね。

 

この本は、ジャンルは人それぞれ違えど、この境地に至るための入門書であるということです。

なので、これから洋服について勉強したい、おしゃれになりたいと思う人がいたら、最終的に行きつくのは結局こんな「服が好きな変わり者」になりかねませんから、ぜひとも気を付けてくださいねというのが当ブログからのメッセージです。

 

何事もほどほどに。