アメカジ古着では定番アイテムでありながら、「これ、いつどうやって着りゃいいんだよ」とつっこまれるためにあるような謎服、半袖スウェット。
夏には暑い。秋には寒い。
日差しが強く空気がカラっとしたアメリカ西海岸ではきっと重宝するであろうアイテムも、ここ日本の気候ではそのレーゾンデートルがまったくもって意味不明とされてきました。
僕はこれまで何着も買ってきました。中には恵比寿の「2nd-Boom」でデッドストックで買った60'sモノや、ナンバーではなく「?」とプリントされたものなど貴重なやつもあったけど、結局は出番が少なくて、ぜんぶ手放してきました。
いま持ってるのはこの一着のみ。
Lightning Bolt のもの。
MADE IN U.S.A.。
まだUS企画と日本企画の区別がちゃんとついていなかった時代に、セカストで見つけて買ったもの。
今ならば、タグにRN表記も無いし、レーヨン混の素材や染み込みプリントといったこだわりの作りからパッと見で日本企画のライセンス品だとすぐわかるので、きっとスルーしていることでしょう。
でも結果オーライ。作りと着心地がとても良く、しばらく気に入って着ています。特にレーヨン。現行品ではほとんどなくなったけど、レーヨンが入ってテロっと流れて落ちていく素材感のスウェットやTシャツの生地ってのは、何とも蠱惑的な魅力があります。
んで、そうなんです。ちゃんと着てはいるんですよ、今は。
これは明らかに温暖化による気候変動の影響でしょう。半袖スウェットがちょうどいい日が増えてきたんです。晩夏から秋にかけて、ちょっと肌寒いけど、歩いたり日向にいるときは少し汗ばむくらいの日。これまでは年に1回2回あるかないかだったそんな日が、ちょっとずつ増えてきました。さらに空調が効いた室内のことも考えると、これがちょうどいい機会はさらに多くなると思われます。
ところが、なかなか思い出さない。
せっかくそういう気候の日があっても、クローゼットを見渡した時に「半袖スウェットを着よう」と思いつくことができず、外出してから「あ! あれを着ればちょうどよかった!」と思い出すわけです。
※もしくは、ちょうどそんな気候の日に限って外出しない。
そんな折、これからもっと着たいなと思わせる出来事が。
先日、俳優の菅田将暉氏がバラエティ番組に出演し、そのときに着用していたスウェーデン軍のM59というズボンの相場が一気に高騰するという出来事がありました。
注目を浴びたのはズボンのほうだけでしたけど、そのときにトップスに着ていたのが半袖スウェットだったんですよ。
https://www.oricon.co.jp/news/2209066/full/
60~70年代頃のスウェットですね。ブラック・ボディで、プリントはカンザス州立大学のカラーフロッキー。ブラック・ボディでカラーフロッキーなんて、ヴィンテージ・スウェットの王様ともいえるレア中のレア・アイテムですよ。探して出てくるもんじゃないし、出てきたとしてもサクッと買えるような代物じゃない。
もともと袖がぶった切られていたのか、自分で切ったのか。もとから切られていたなら相場より安めに買えそうですけど、もしも自分で切っていたとしたら、さすがはスターってなもんです。
番組内で触れられたうえに値段まで明かされて一気に話題となったズボンよりも、僕はむしろ「やっぱ半袖スウェットって良いなあ」と改めて思っちゃったわけですな。
そうだよな、わざわざ半袖スウェットを探さなくても、着なくなったスウェットをぶった切ればいい。てなわけで今、その犠牲者として候補に挙がっているのがこいつ。
ホツレがあったり袖に小穴があったりするので、犠牲になるにはちょうどいいかなと。菅田将暉よりも長めの5分袖くらいにするといい感じかも。インナーにシャツやサーマルを着てもいいし。
ただ、ボディのほうが……
80'sのHanesなので、今のところまだまだ「レギュラー古着」枠です。でも、このあたりもネクスト・ヴィンテージ/ニュー・ヴィンテージの範疇に入ってきちゃいましたね。近い将来(下手したら来年・再来年レベルで)、確実に今よりも価値が高まってくると思われます。
そうなるとねえ、袖を切ってわざわざ価値を落とすのもどうなのかと思っちゃうわけですよ……。着ないならば、このままメルカリで売ったほうがお金になるじゃないですか。
その価値と言っても、たかだか数百円・数千円レベルなんですけど。これだから貧乏はイヤだな。こんなボロの中古衣料にこだわっていないで、雑巾にして捨てるくらいの人間になりたいものだな。
袖が無くなって年に2~3回着ることになるのか、メルカリでドナドナされることになるのか。こいつの生殺与奪の権利はおれが握っている。
……その価値と言っても、たかだか数百円・数千円レベルなんですけど。
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