僕の父親はもともとバスの整備士でしてね。油まみれの白いツナギを着て、ポケットにはいつもスパナやドライバーが入ってて。それを当時カッコイイと思ってたかどうかはよく覚えていませんけども。
その後、僕が小学生の高学年くらいですかね。父親はどうやら真面目な仕事ぶりが認められたらしく、管理・事務側の部署に異動となりまして。ツナギ姿から一転、スーツを着る仕事になりました(その異動は珍しかったようで、同僚からのやっかみもあったらしいと後に母親から聞いたことがあります)。
これだけは覚えていますが、子供ながらになんとなく寂しかったですね、仕事でツナギを着なくなったことが。ちなみにその後も自宅で家庭菜園や作業をするときはそのツナギを着てて、たしか今も着てるはず。そのツナギどんだけタフだよ。
んで、整備士あがりにもかかわらず立派なことに管理職にもなって、リタイヤするまでずっとスーツの仕事だったのですが、僕の中で“父親の姿”として思い浮かぶのは、未だに幼少時代に見ていた、ツナギでスパナを持った父ちゃんなんですよ。仕事から帰ってくるのが嬉しくてね。その姿で一緒に遊んでもらって。ちょっと泣けてきたな。まだバリバリ生きてるけどな。
なので、僕にとっての“大人”、そして“父親”のイメージ。それは「工具を使える」ということなんですね。
壊れたものを直せる。メンテナンスができる。何かを作れる……。子供の頃、父ちゃんがいろんなものを作ってくれたり直してくれた思い出から、「男ってのはそういうものだ」というイメージの擦り込みがあります。
以上は僕の個人的な思い出ではありますが、やっぱり男の子ってみんな“道具”が好きなんじゃないですかね? 例えば『ドラえもん』がどちらかというと男の子向けの漫画である理由も、「道具を使いこなす」という男としての美学、またはステータスみたいなものを感じてしまうわけです。
古い物をメンテナンスしながら使い続けるとか、リペアするとか、いかにも男の嗜みじゃないですか。例えば“靴磨き”なんてその最もたるものだと思ってます。女の人って靴磨きしないでしょ? そもそも、女性物で磨く必要がある靴なんて滅多にないし。
※ここでジェンダーうんぬんの話は受け付けません。古典派の言い分として読んでください。
※女の子の、手入れされてないボロい靴ってエロいですよね。
そして、今回取り上げるアイテム。ご存じ、スイスのナイフメーカー「VICTORINOX」。ここのマルチツール。
十徳ナイフって、もうこれ、男の子の夢そのまんまだと思うんですよ。これ一つで何でもできるんですもん。
僕が愛用しているのは、現在の名称「ミッドナイトマネージャー」というモデルです。
VICTORINOXを買ったキッカケが、キーホルダーを探していたからなのか、それともマルチツール自体が欲しかったからなのかがどうしても思い出せないのですが、まだネットを導入していなかった頃にお店でカタログをもらって、にらめっこしましてね。僕の欲しい工具が全て過不足なく揃ったモデルが、数あるラインナップの中で唯一コレだったのです。
もう20年くらい、自宅の鍵を付けて、常に携帯し続けています。もはや「無くては困る」というほど愛用しています。
最初のものは、東京・渋谷の東急ハンズで買いました。使っているうちにハサミのバネが折れてダメになり(なんせ日頃のヒゲの手入れにも使ってたからな)、上野の高架下の工具屋で正規の部品で交換してもらったりもしましたが、数年前に他にもガタがきたため買い換えて、現在のは二代目。
ちなみにもし壊れても、代理店による保証やメンテナンスのアフターケアは充実してるのですが、値段的にめちゃくちゃ高いってわけでもないので「直すより新しく買ったほうが早えや」ってのは正直ありまして(笑)。
なお、この「ミッドナイトマネージャー」というモデル。数あるVICTORINOXのラインナップの中で、さほど人気があるというわけでもなさそう。マルチツールを検索して出てくる順位も低い。
えーマジで!? 僕にとっては必須なツールが詰まっているのになあ。
ハサミ。
新しく買った洋服のタグのカイワレを切ったり、紙を切ったり。これまでも普段の生活で「え? ハサミ? おれ持ってるよ」みたいな感じでどれだけ役に立ったか。
カッターナイフ。
郵便の封書を開いたり、届いた荷物の段ボールを開封したり。まあその他いろいろ普通に使えますよね。
あとこれ、防犯にもなります。もしも暗い夜道で何かあったら、これで首や腹を刺しとけばなんとかなるかなー、と(もしかしたら厳密には持ち歩いてるだけで銃刀法違反になるのかもしれないケド。ちなみに飛行機には持ち込みできません)。
・爪ヤスリ
爪、研ぎますよ。なんとなく爪が気になるとき、普通によくあります。
・マイナスドライバー
これがまた必要になるときって意外にあるんですよ。一番使うのはメガネやサングラスのヒンジ。よく緩むんです。一般的な眼鏡はこれじゃ大きすぎるかもしれませんけど、普段使ってるサングラスには偶然にもちょうど使えるサイズなんです。
・キーリング
キーホルダーとして使ってますからね。お家のカギを付けてます。
・栓抜き
僕は自宅でホッピーを飲むときに使いますけど、宅飲みやらBBQ的なものやら、まぁ何かの集まりで、考えもなく栓付きの飲み物を買っちゃったりして。「栓抜きなんてねえよ!」ってときに「いや、俺あるし」みたいな。救世主登場的な。いや、これ、妄想じゃなくて実際にありましたから。
・プラスドライバー
これもあります、突然必要になるときが。すぐ思い出せるのは、子供のラジコン。おもちゃ屋でラジコンを買ってそのまま遊びに出かけたらですね、電池を入れるのにドライバーが必要でしてね。一瞬焦ったけど、パパは持ってるから! ドライバーありますよ、安心してください! とにかく大丈夫な齋藤です。
ボールペン(青インク)。
仕事中とかで普通にあります。急にメモが必要で、「あ! 書くものが無い!」ってとき。これまで何度もありました。でも僕は持ってます。いつでも書けます。これも普通に使えます。
LEDライト。
正直、こいつだけは使いません。なかなか普段の生活でその機会に巡り会わない。
でも、あるんです。
子供。
子供にこのボタンを押して光らせて見せると、バカみたいにテンション上がりますね。まぁガキは生物として未熟なので、基本的に全員バカなんですけどね。やらせろやらせろで大変ですよ。
あと、僕もまだ子供なので、たまにこれを押して光るとちょっと楽しくなってきますね。暗いところで「ホタルだホタルだ」つって遊んだりしますね。
これだけの機能が詰まって、長さ5cm程度の大きさに収まっているんですから大したものですよ。普通のキーホルダーとして使えます。
このマルチツールを持ち歩いているだけで、これがあればいざってときもなんとかなるんじゃないかという、軽い安心感と万能感が味わえます。
繰り返しですが、このナイフは人を軽く痛いと思わせる程度には刺せますし。道具が大好きな男の子だけではなく、女性が防犯用品として持っていても良いのかもしれません。
道具を使いこなす楽しさと、大人の男感。そして何より、ウンチクも語れて、舶来品でカッコイイ。
ビクトリノックスのマルチツールにはいろんな種類・ツールの組み合わせがある中で、僕が使うこの「ミッドナイトマネージャー」は特に人気モデルでもないようですし、誰にとってもベストとは言えませんが、そのように使う人の用途に応じて組み合わせを選べるというレンジの広さも魅力だと思います。
工具と刃物を上手に使える大人に、僕はなれているのだろうか。
日曜大工? アウトドア? えーと、僕はそういうのお断りします、ハイ。
家で音楽聴きながら酒飲んでいたいので。